B-52爆撃機の星追尾装置内の電気機械式角度コンピュータ
概要
- GPS登場以前、航空機は天測航法などで航行
- B-52爆撃機にはAstro CompassとAngle Computerが搭載
- Angle Computerは電気機械式アナログ計算機で三角関数計算を自動化
- システムは星の位置から精密な方位や位置情報を算出
- 操作や計算方法、星の座標変換の仕組みについて解説
GPS以前の航空機航法と天測航法
- GPS普及前、航空機は天測航法(星や太陽の位置を利用)を活用
- 天測航法は高精度で妨害不可能、放送インフラ不要
- ただし手動計算は困難かつ時間がかかるという課題
- 1960年代初頭、B-52爆撃機用に自動天測システムが開発
- 当時のデジタルコンピュータは不適切だったため、Angle Computer(電気機械式アナログ計算機)を使用
Angle Computerの仕組み
- Angle Computerは複雑な電気機械構造を持つ
- ジャイロやIMUとは異なり、回転部品は存在しない
- 「天球」を物理的にモデル化し、星の位置を示すポインタを動かす
- 方位角や高度などの角度情報はシンクロ装置を通じて電気的に出力
- ナビゲーションシステムへワイヤバンドルで情報伝達
Astro Compassシステム
- Astro Compassは**星を自動追尾し高精度な方位(0.1度単位)**を算出
- 主な出力は方位だが、「位置線法」で位置特定も可能
- Astro Tracker(光学追尾装置)は機体上部に設置、4インチのガラスドームが特徴
- 追尾望遠鏡は光電子増倍管で星の光を検出、ジャイロとモーターで安定化
- プリズムを回転・傾斜させ特定の星を狙う機構
システム構成と操作パネル
- Astro Compassは19個のコンポーネントで構成
- 右側:10個のアンプ・計算機(Angle Computer含む)
- 左側:9個のコントロール・インジケータパネル
- 操作はMaster Control Panelでデータ値を選択・入力
- 各ノブは形状が異なり、触覚で区別可能
- 各データ値は電気機械式ディスプレイで個別表示
- Star Dataディスプレイは3つ分あり、最大3つの星のデータを保持・切替可能
必要な天体情報とAir Almanac
- 天体データはAir Almanac(天測暦)に掲載
- 米国政府が1941年から発行、10分ごとの天体データを収録
- 各日のシートに太陽・月・惑星・星の位置情報を記載
- 星の座標はほぼ不変だが、太陽や惑星は日々変化
ナビゲーショントライアングルと座標変換
- Air Almanacの座標(天球上)は地上座標系とは異なる
- 航空機の現地座標(水平座標系)へ変換するには球面三角法を使用
- 水平座標系は**方位角(Azimuth)と高度(Altitude)**で星の位置を表現
- 地球の自転により、星の方位角・高度は常に変動
- これらの複雑な三角関数計算をAngle Computerが自動実行
天球座標と用語
- 天球座標は赤道座標系を採用
- 赤緯(Declination):地球の緯度に相当
- 時角(Sidereal Hour Angle, SHA):経度に相当
- 基準子午線(0°)は春分点(First Point of Aries, ♈︎)
- 地球の歳差運動により、春分点は時代とともに移動
- 星の固定座標を地球の回転座標系に変換
- **GHA(Greenwich Hour Angle)**やLHA(Local Hour Angle)を計算
まとめ
- 天測航法は高精度かつ信頼性の高い航法として重要
- B-52用Astro Compassは自動追尾・計算機能で実用性を大きく向上
- Angle Computerによるアナログ計算の工夫と、複雑な座標変換の知見
- 現代のGPS登場以前の航空技術の粋を示すシステム