概要
- インターネットの経路制御は主に BGP と 信頼 に依存
- RPKI 導入で経路ハイジャック対策が強化
- 中国の急速なRPKI導入が世界的な普及率を大幅に押し上げ
- IPv6 でのRPKI普及がIPv4を上回る
- RPKIの限界や運用上の落とし穴も明らかに
インターネット経路制御とRPKIの役割
- インターネットは BGP (Border Gateway Protocol) を使い、各ネットワークが到達可能なIPアドレスを相互に通告
- BGPの通告は 信頼 に大きく依存し、誤った通告で通信障害やサービス不可が発生
- 例:2008年2月、 Pakistan Telecom がYouTubeの経路を誤って全世界に通告、YouTubeへのアクセスが約2時間不能
- こうした問題への対策として、 RPKI (Resource Public Key Infrastructure) の開発が進行
- RPKIはIPアドレス所有者が ROA (Route Origin Authorization) を発行し、許可したAS番号のみが通告可能に
- RPKIを検証するネットワークは、不正な経路通告を拒否できる
RPKIの普及状況と効果
- 2026年9月時点 で、世界の 70.3% の経路プレフィックスがRPKI有効(前年比で大幅増加)
- 前年54.0%→70.3%、16.4ポイント増(過去2年合計より多い伸び)
- 中国のIPv4アドレスでのRPKI有効率が 3.7%→83.0% へ急増、世界全体の伸びの約60%を中国が占める
- 無効な経路はほとんど伝搬せず、RPKI検証が広まったことで不正経路は即座に遮断
- 有効経路は平均596地点で観測、無効経路は2地点のみ
- 国別の無効経路割合は、経路数でなく実際に観測されるアドレス数で評価すべき
- 例:スペインの無効経路割合は28.2%だが、実際に影響があるのは0.057%のみ
RPKIの普及を牽引した国と地域
- 世界全体のRPKI有効率は、2023年42.7%→2024年47.9%→2025年53.1%→2026年65.0%と推移
- 中国を除くと、2025年58.0%→2026年63.2%と5.2ポイント増
- 新興国でも急速な普及
- エジプト:23%→99%
- カザフスタン:16%→84%
- メキシコ:37%→78%
- 南アフリカ:38%→60%
- 未保護アドレスの約60%が米国、うち多くは米国防総省所有
IPv6でのRPKI普及状況
- 2025年初頭、IPv6でのRPKI普及の鈍化が懸念されたが、その後加速しIPv4を上回る
- 2025年末~2026年、IPv6のRPKI有効経路率は 56%→79%、IPv4は 54%→68%
- ROAあたりの平均アドレスブロック数やリポジトリ数も増加傾向
RPKIの限界とリスク
- RPKIは経路の 起点(origin) のみを検証し、経路そのもの(path)は検証しない
- 正規のROA設定の隙間を突いた攻撃が可能
- 例:2026年8月28日、HetznerのAS番号を偽装したRPKI有効な経路が出現、悪意あるアップデート配信に悪用
- 正規のROA設定の隙間を突いた攻撃が可能
- 世界のRPKIカバー経路のうち 16.2% (IPv4)は、より細かい経路を偽装できる“緩いROA”設定
- ホスティングやアクセス系事業者で設定の差が大きい
- 例:Contaboは553経路中540経路で緩い設定、DigitalOceanは863中780経路
- ホスティングやアクセス系事業者で設定の差が大きい
- RFC 9319ではmaxLength未設定が推奨だが、現状多くが緩いまま
RPKIカバー率の低下事例
- RPKI保護はROA失効で突然消失することがある
- モーリシャス:2025年94.0%→2026年69.0%、SEACOMのROA消失が主因
- サウジアラビア、モロッコでも大規模ROA失効と復旧が発生
- 通信自体は維持されるが、RPKIによる保護が消失
RPKIの測定上の注意点
- RPKI記録の検証方法によっては、実際は有効な経路が“失敗”と誤判定される場合あり
- 上位証明書へのリンク切れ等が原因
- 実際のルータ検証では問題なく保護されている場合も多い
経路パス検証(ASPA)の進展
- RPKIは経路起点の検証のみ、経路パスの検証には ASPA (Autonomous System Provider Authorization) が対応
- ASPAはネットワークが正規の上流プロバイダを署名付きで公開し、経路リークを検出可能
- 2025年9月時点で131ネットワークがASPAを公開、2026年には3,272ネットワークへ急増
- 普及は段階的、今後の発展に期待