世界を動かす技術を、日本語で。

数学者たちが泣く理由を知っている

2026年10月15日原文(derekthompson.org)

概要

  • OpenAIが発表した数学的成果が数学界に衝撃を与えた現状
  • 人間の知性とAIの知性の違い、そしてその文化的・社会的意味
  • 数学や科学における「会話」と「発見」の二重性
  • AIによる知識の獲得と人間的な「理解」の喪失リスク
  • 今後人間に残される役割と、科学における人間同士のつながりの重要性

OpenAIによる数学界への衝撃

  • OpenAIが数百件に及ぶ新しい数学的発見や証明を公開
  • 数学界の第一人者たちが数十年、時には数世紀にわたり解けなかった難問の解決
  • 数学者たちの反応は驚き、悲しみ、憤りが混在
    • Fields賞受賞者Hugo Duminil-CopinやCornell大学のSteven Strogatzの証言
  • 多くの数学者が自らの研究分野の「終焉」や「存在意義の喪失」に直面

人間の特別さとAIの知性

  • 人間の知性と社会性の相乗効果による文化と進歩
    • 模倣と工夫、世代を超えた知識の蓄積
    • 他の動物との比較(カラス、アリ、ゾウなど)
  • 科学や数学は「職人技」と「会話」の両面を持つ
    • 発見の積み重ねと、共同体としての対話
    • Newtonの「巨人の肩の上」、Feynmanの「専門家の無知への信仰」

AIと人間の科学的営みの違い

  • AIによる大量の証明公開が「会話」としての科学を中断
  • 数学的発見の「職人技」側面はAIが担えるが、「会話」や「共感」は人間固有
  • 数学界とAIラボの文化的対比
    • 伝統と礼節の数学界(Wimbledon)
    • 民主的で破壊的なAIラボ(US Open)

AIによる知識獲得と「理解」の喪失

  • AIによる証明や解答が「知識」にはなるが「理解」には直結しない危険性
    • AIの推論過程が人間には不可解で「Twilight Zone」的
    • Google Translateの例:実用的だが言語学的理解は得られない
  • 「理解」は単なる快楽以上のものであり、科学的進歩の原動力
    • MaxwellやEinsteinの例:深い理解が新理論を生む

人間に残される役割と未来への展望

  • AIによる自動化が人間同士のつながりや「会話」を脅かす懸念
  • それでも人間にしかできないこと:「他者と関わり、共感し、伝える力」
  • Archimedesの手紙のように、知識の共有や教育、異なる知性との対話が人間の役割
  • 科学の「会話」的側面を守ることが、これからの人間の挑戦
  • AIが全ての真実を見つけた後、残るのは「人間同士を見つけ合うこと」

Hackerたちの意見

今、ちょうどストロガッツの「非線形ダイナミクスとカオス」を(再)読んでるんだ。めっちゃ美しい本で、AIの時代に入ってもこれに匹敵するものはないし、楽しみが減ることもないよ。

└

要するに、AIの時代には、ストロガッツのようにキャリアを追求して作品を生み出す機会がほとんどないってことだと思う。

数学者はこれからも重要な存在だと思う。LLMは、今の知識の幅の中で技術的に可能なことを見つけてるだけで、問題を brute force で解いてるんだよね。結局、トレーニングでできることが限界に達したら、新しい人間が見つけた知識で再トレーニングしないといけなくなる。新しい知識を見つけるのは指数的に難しくなるかもしれないけど、ずっと価値があるよ。

└

これは、人間がLLMにはできない独創的な方法でオリジナルであることが前提だけど、それが本当に成り立つかは疑わしいな。

└

これを言いに来た。AIが数学でやってることは基本的にファジングだけど、問題を解くための有効な入力を探してるんだ。その入力は数学的抽象概念なんだよね。面白いアプローチだけど、AIは何が起こってるのか理解してないし、理解がないと次世代の証明に必要な数学的抽象概念を作ることはできないと思う。

└

問題を作るのに数学者は必要じゃないの?今まで解決されたものは全部、人間が出した質問だよね。だから、病気を解明するのが難しいのかも(人造ウイルスは別としてさ :/)

└

結局、訓練でできることがなくなってしまうから、もっと何かをさせるには新しい人間の知識で訓練するしかなくなるよね。どうしてそんなことがわかるの?

└

数学者ネスター・ギレンのエッセイを読んだんだけど、すごく面白かったよ。「アイデアの凸包」について考察してるんだ。

ソフトウェアエンジニアとしては、数学者たちに同情するのは難しいな。AIの進歩でソフトウェアエンジニアが解雇されてるのに、数学研究者は大学に雇われてるし、OpenAIがいくつかのパズルを解いたからって数学者を解雇する大学はないからね。数学者は家族を養えるけど、AIに置き換えられたソフトウェアエンジニアはそうはいかない。なのに、数学者の苦境についてのブログはたくさんあるけど、ソフトウェアエンジニアの苦境についてはあまり見ないよね。

└

大学の話じゃなくて、今後数年間の助成金の話だよ。AIが人間よりも役立つなら、崩壊するのも当然だよね。トークンで済むなら、なんで人にお金を払って探させるの?

└

ソフトウェアエンジニアがAIの進歩のせいで解雇されてる。エンジニアを解雇してる経理の人たちは、フロンティアラボの採用方針を見習うべきだよ。彼らは自社の世界クラスのモデルでその仕事を自動化できるのに、ビジネスやエンジニアリングの役割にはまだたくさんの人を雇ってるんだから。

└

これは、ソフトウェア開発者に同情しない人たちと同じ方向に行ってると思う。私たちの仕事は他の人の仕事を自動化することだって言われてるけど、全体としてその職業を正確に表してるとは思えない。どちらも納得できないな。新しい技術に対処しなきゃいけないことをみんなで認められないのかな?今この技術を推進してる限られた人たちを見て、彼らのやってることに賛同すべきかどうか考える代わりに、お互いを見て、誰かが同じように苦しんでるのを喜んでる。なんて悲しい状況なんだろう。

Hacker Newsで議論の続きを見る